活動日誌 5/2〜5/3

 5月2日 晴れ 微風

 本日、かねてよりの計画通り行われていた入会説明会はふたり組みの男の急襲を受けた。

 このままK207に留まり続けることは当会にとって無益との判断が現場で下され、我々は撤退することとなった。我々二輪車部隊は後の再会を誓って散開し、後は各々がそれぞれ選んだ道を走ることになる。
 林を抜けた私がようやく集結地点である本部に辿り着こうとしたとき、ちょうど別ルートを選択していた雪、ぼしゅー両名がその二輪車を施設内にすべり込ませた。よほど慌てていたのであろう、普段からこの程度の移動には慣れているであろう彼らが息を上げ、明らかな疲れの色を見せている。
「別にそんな競争せんでも」
 原動機搭載の二輪車を駆るSota会長はそんなふたりにも涼しい顔で毒づく。だが、私はそんなふたりの暴走も若さゆえのものと思えば、うらやましくもある。

 ふたり組みの襲撃者はTakaceとかめきち。どちらもかつてこの西条でならしたGSDの元メンバーである。彼らも必ずここに現れる。それまでに我々がすべきことは何だろうか。とりあえず卓を囲んだ二輪車部隊の4人だが、それ以上の結論を出せないまま彼らの出現を待つことになった。
 当然の如く襲撃者は現れた。さらにK207で別行動となっていたDraも帰ってきた。こうして本部内の人間が7人を数えるようになると、頃合良しとみたのか、襲撃者はとうとうその目的を達するべく活動を開始した。まず、本部にある書類を片っ端から漁っていく。当会の中枢たるここには我々にとって重要な機密書類等も多数保管されている。それを吟味し、そのうちのいくらかを拳大の粗い球形に加工していくのだ。一方、我々にできるのはただそれを見守ることばかりである。
「何か袋はありませんか」
 その声は私に向けられたものであった。私はそばにあった袋を拾い上げ、中身を捨てた。それは、ありふれた小さなコンビニ袋だった。差し出すと、彼らは作った球体を大事そうにその中に詰め込んでいった。そして、その度に会の重要情報がひとつ、またひとつと失われていく。

 落ち着いた話の席を設けるべく、襲撃者と当会の古参3人は手近なファミリレストランに場所を移した。
 そこで彼らが話し始めたのは驚くべき事実だった。彼らはまもなく帰るつもりであること。Takaceの携帯電話が無いこと。それが無ければ彼らは帰れないこと。つまり、ふたりの急撃者、彼らは帰る手段を失った旅人なのだ。そして恐ろしいことに、もし今夜帰れなければ徹夜でスポーツをしなければならないのだ。
 それを知ったfly-leafとDraがふたり掛りでいくつものデータにアクセスし彼らを送り返す手段を探す。だがその間にも、夜は刻一刻とその深さを増し、希望を闇で覆い尽くしていく。
 本部施設に戻り、Takaceの携帯電話は見付けることができた。だがもうすでに彼らを送り返すのが不可能になっていることも確認された。そこで盛大な宴が張られ、あらためてふたりを一夜の客として受け入れることになった。本部に集った人間は最終的に13人にも達していた。

 夜も更けた頃、Draとふたりは部室を離れていった。彼がふたりに帰れるようになるまでの居場所を用意するというのだ。
 かくして襲撃者は去り、会に日常が戻った。私の手元には彼らに託された袋が残った。中にはいくつかの白い球体。今の私にその意味を知ることはできない。だが、きっといつの日かこれらが全て解読され、彼等の真意が判るときも来る。
 そして来週もまた、我々は入会説明会を行うだろう。

[温室ドーム by あおい]

 この物語はノンフィクションです。登場する人物、団体等は全て実在します。

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